2012年2月12日日曜日

J・エドガー

毀誉褒貶(きよほうへん)
褒められることと貶されること両方ある世間的評価。
まさに、ジョン・エドガー・フーヴァーという人は毀誉褒貶の人だった。

【あらすじ】
FBI(アメリカ連邦捜査局)の初代長官を務めたジョン・エドガー・フーバー(J・エドガー)の半生を、クリント・イーストウッド監督とレオナルド・ディカプリオの初タッグで描くドラマ。1924年、FBIの前身である捜査局BOIの長官に任命され、35年にFBIへと改名した後も、72年に他界するまで長官として在任したJ・エドガーは、カルビン・クーリッジからリチャード・ニクソンまで8人の大統領に仕え、FBIを犯罪撲滅のための巨大組織へと発展させていった。しかし、多くの功績を残した一方で、時に強引な手腕が物議をかもし、その私生活は謎に包まれていた……。脚本は「ミルク」でアカデミー賞を受賞したダスティン・ランス・ブラック。共演にナオミ・ワッツ、「ソーシャル・ネットワーク」のアーミー・ハマーら。(映画.comより)


初代FBI長官でもあり8代の大統領に仕え約50年近くも長官職に留まった。
科学捜査を取り入れ、FBIを影響力の強い組織に作り上げたとされる。

その反面、かなり強引な捜査方法と誇大に喧伝されたFBIの功績(捏造含む?)
には疑惑や批判もある。
反共、人種差別主義者、虚栄心が強くまた他人を全く信用しない。

このようなどこをとっても人から憎まれこそすれ、愛されるということのなさそうな
人物の物語なのだが、公的な人物像ではなく、その裏に隠された個人としての
J・エドガーという人物を丹念に描いていきます。

一見すると、映画の構造が分かりにくく、エピソードがバラバラでしかも真偽が曖昧、

物語の進行も現在と過去がシームレスに語られるので、観ているこちら側が混乱するような状態になったりします。

そのせいか、観終わった後にはもっと整理された見せ方のほうが良かった
では?と思ったのでした。

しかその後、その混乱した映画の構造自体がJ・エドガーという人物を物語っているという評を聞き、大いに納得。

とすれば、あの虚実曖昧な事件のエピソードや強権的な振る舞いも
強烈なプレッシャーの家庭(母)の中で育まれてしまったものの発露とも取れるし、
また、そのプレッシャーの中にあって、その虚勢が崩れるシーンには胸をうたれて
しまいます。

バラバラに見えていたピースをLOVEを中心に組みなおしてみたら、
不器用なロマンスの形が浮かび上がってきてとても切なくなりました。

どんなに悪評があり、世間から悪口雑言を浴びせられる人物であったとしても、
知られていない面があり、そしてそんな人にも愛する、また愛してくれる人が
いるということを思うとき、完全な悪は存在しないのではないかと思うのです。

この映画は自己を強烈に抑圧してしまったが故に、他者を抑圧してしまった
人物の物語であり、生涯解放出来なかった孤独な人物の哀しい物語です。

レオナルド・ディカプリオの作り込んだ演技はいうまでもありませんが、
ナオミ・ワッツの殆ど台詞が無いなかでの存在感とアーミー・ハマーの美しさ
には、圧倒されるものがありました。

こんなに混乱した人物や物語の背景、クセのある演技者たちを
まとめたC・イーストウッド監督、さすが手錬という作品です。

J・エドガー
http://wwws.warnerbros.co.jp/hoover/index.html#/home

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