2012年5月30日水曜日

孤島の王

上映終了ギリギリで間に合いました。
ノルウェー映画「孤島の王


【あらすじ】
1915年北欧ノルウェーのバストイ島は罪を犯した少年たちが収監される監獄島。
そんな外界と隔絶された島に送還されてきた非行少年エーリングが見たものとは・・・。
実際にあった事件を基にした衝撃の物語。

先日観た「ティンカーテイラー」も北欧(スウェーデン)の監督でしたが、
この映画も北欧ノルウェーの作品です。

1915年に実際にあった少年向けの矯正施設(監獄島)で軍隊が鎮圧するほどの
反乱事件を基にした物語。

罪を犯した少年たちが厳しい規律と体罰によって管理され、
院長や寮長は高圧的で絶対君主として君臨している。

新たに送還されてきた少年エーリングはそんな規律に馴染めず反抗を繰り返す。
そんな中、当初は反発しあっていた寮生たちとは、厳しい環境下でお互いを認め
あっていく。

しかし、抑圧と虐待がエスカレートしていき、寮生たちの忍耐も限界を
迎えることになる。


私の中で北欧というと、自然豊かでエコ意識が高く、個人の権利がとても尊重
されていてのんびり優しい国々というイメージ。

しかし、ここで描かれている物語はその対極にある世界。

監獄からの脱出物映画は数多くあり、その多くが看守などの
取り締まる側の暴力や抑圧に耐え切れずに脱出を企てるという物語。

この作品も確かにその範疇の物語なのですが、描き方が独特。

物語の進行は実に淡々と進んでいき、寮生たちの交流もこれ見よがしの
盛り上げはなく、さり気ない小さな出来事の積み重ねによって表現されています。

よって、その積み重ねが終盤の少年たちの暴発のきっかけとその後の暴動、
脱出に至る怒涛の連続描写をとてつもなくハラハラドキドキさせてくれるのです。


まるで交響曲のように静かに始まり終盤に向かいながらどんどん加速し
複雑な音の絡まりあいと共鳴のように圧倒的な音圧となって耳に流れ
込んでくるようなストーリーテリング。

どうしようもないあの終盤のシーンには本当に呆然としつつも
安易な結末に逃げていなくて、私としては好きな終わり方でした。

それにしても、罪を犯した者には何をしても良いんだというような
空気や実際の現場での対応というのは1915年という時代だけではなく、
現在も厳然としてある意識であり空気であると思います。

確かに、罪を犯した者は罰せられなくてはいけないかもしれないけれど、
何をしても言い訳ではない。
しかし、心のどこかで罪を犯したんだから仕方ないのかも・・・
なんて気持ちが少しはあるのも確か。

抑圧や暴力で罪を償う事や、人間性を矯正する事ができるのかという
今にも通じる問題をも投げかけていると思います。

院長や寮長が自分の心の片隅にある他罰的な気持ちのデフォルメ
された姿だということも心に留めておきたいとも思いました。

※それにしても、さすがノルウェーといいますか、画面が寒くて寒くて本当に凍えそうでした。

「孤島の王」
http://www.alcine-terran.com/kotou/index.html

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