今月の26日に映画「一命」を観てきました。
この映画は滝口康彦の「異聞浪人記」が原作であり
1962年に小林正樹監督が映画化した「切腹」のリメイクです。
【ストーリー】
戦国の世は終わり、平和が訪れたかのようにみえた江戸時代初頭、徳川の治世。
その下では大名の御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家もなくし生活に困った浪人たちの間で
“狂言切腹”が流行していた。それは裕福な大名屋敷に押し掛け、庭先で切腹させてほしいと願い出ると、面倒を避けたい屋敷側から職や金銭がもらえるという都合のいいゆすりだった。
そんなある日、名門・井伊家の門前に一人の侍が、切腹を願い出た。名は津雲半四郎(市川海老蔵)。家老・斎藤勘解由(役所広司)は、数ヶ月前にも同じように訪ねてきた若浪人・千々岩求女(瑛太)の、狂言切腹の顛末を語り始める。武士の命である刀を売り、竹光に変え、恥も外聞もなく切腹を願い出た若浪人の無様な最期を……。そして半四郎は、驚くべき真実を語り出すのだった・・・。
昨年公開された「十三人の刺客」の三池崇史監督の本格時代劇という事もあり、
とても期待して観に行きました。
並々ならぬ緊張感に包まれた静けさのなかから始る冒頭から
画面に充満する不穏な空気感にまず圧倒されました。
最初はゆったりと始まり、徐々に加速していく物語の速度、最後は怒涛の結末に
観客の感情も揺さぶられ続けます。
この物語は江戸時代、武家社会のお話ですが、組織の正義、忠誠心、矜持、不条理
などは全く現代に置き換えても違和感の無いストーリーでした。
さらに、この映画の特徴は今までの時代劇とは違い、勧善懲悪ではないというところ。
どちらの言い分が正しいという事ではなく、どちらにも言い分はあり、そして立場が違えば
取る行動も180度違ってくるという事。
しかも、その立場の違いは決して必然ではなく、ちょっとした運の違いから
きているということ。
そんな立場の違いを配役から道具立てなどの対比で見事に表現しています。
役者陣の演技も見事で、主役の市川海老蔵と瑛太は余り歳が変わらないのにも
関わらず、この映画では海老蔵は瑛太の義理の父親を演じています。
しかし、それが全く不自然ではないのです。
あの説得力は一体何なのでしょうか。
やはり演技というものは一種のマジックであると思います。
この映画は「切腹」のシーンがあり、そのシーンはかなりエクストリームに
表現されているので、観ているこちらが心底辛くなってしまうのですが、
その表現が無残であればあるほど、後々の物語に深みを与えていると思います。
よく、過激なシーンを何の意味も無く多用する映画もありますが、そのような
見世物的な下劣なものではなく、一番言いたい事を一番強く伝えるための
方法としてのシーンなのです。
この映画は決して痛快とはいきませんが、様々なメタファーを散りばめた、
第一級のエンターテインメント映画だと思います。
是非、ご覧になって損は無いと思います。
http://www.ichimei.jp/
三池崇史監督のインタビューもとっても興味深いので是非。
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20111008_satlab_1.mp3
(前編)
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20111008_satlab_2.mp3
(後編)
「宇多丸のウィークエンドシャッフル」より
このインタビューでは数々の印象深いお話があるのですが、
物語が作られたから善悪ができた(意訳)というくだりが一番印象に
残りました。
※昨年公開された「十三人の刺客」もかなりオススメです!
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