グラスの中に溶け残った夏という季節の濃さを思わせるような
気温と湿度は身体に堪えます。
これからまだ残暑が厳しくなるのかと思うとちょっとうんざりしてしまいます。
話は遡って7月上旬、度々録画した映画やドラマをダビングして貰っている
友人宅に遊びに行く際、ちょっとしたお礼の品を用意し、その粗品に感謝の
メッセージをポストカードに書いて添えました。
気を使わないで!と恐縮した友人でしたが、持って行った品も勿論喜んでくれた
のですが、それ以上に添えたポストカードを気に入ってくれたのでした。
私が添えたポストカードとは「相田諒二」氏という新潟在住の写真家のもの。
確か20年程前だったでしょうか、私の大好きな古町の雑貨屋さんで見つけて
購入したのでした。
その写真には実際の風景とはまた違った趣のアングルと色味と輪郭で
彩られた新潟の街が映し出されていました。
写真家の方の作品にはそれぞれその1枚で多層的な物語を語る力が
あると思っています。
ずっと眺めていると、こういう人物が住んでいて、こんな曲がバックに
流れていて、こんな匂いが漂っていて・・・そしてこんなドラマティックな
物語が紡がれていくのでは・・・というような感じ。
相田氏の写真もまさにそんな作品です。
見慣れた街の風景なのに、全く別の街がそこには映し出されていたのです。
え、あそこがこんなにドラマチックな顔を持っていたなんて!
何だか安心しきった関係の中に急に不穏なまでにスリリングな瞬間を見せられて
戸惑うような、それでいてときめきにも似たような変な感覚に囚われたのでした。
そんなことを思った頃から時を経て、少しづつ少しづつ使ってきたポストカードが
残り少なくなって来た今、友達から「とっても気に入ったので今度帰省した時に
購入して来てくれない?」との申し出。
私も丁度残り少なになっていたこともあり、自分の分もと思い古町に出かけました。
以前購入した雑貨屋さんがお店を閉じられた事は何となく知っていたので、
きっと、ここにはあるかも?無くても何かしら相田氏の情報を知っていらっしゃるのでは?
と思い、伺ったのが以前このBlogでもご紹介した
「hickory03travelers」という雑貨屋さん。
こちらはオリジナルデザインのTシャツや小物、雑貨類を扱っているお店ですが、
それが新潟に関連した素材やデザインなのです。
(県外の作家さんのものも扱っています)
ですので、きっと相田氏のポストカードも扱っているに違いない!と当たりをつけて
伺ってみたのでした。
それにしても、突然「相田諒二さんのポストカードを扱っていますか?」という私の
問に、最初はびっくりしていたスタッフの方でしたが、すぐ分かってくださいました。
しかし、私が以前購入した雑貨屋さんがお店をたたむ時に、在庫としてあった
ポストカードを受け継いのですが、仕舞い込んでしまっていてちょっと所在が
分かりません・・・とのご返答。
お忙しい中、探して下さっただけで十分でしたので、ちょっと残念でしたが、
また機会があったら購入したいですとお話してお店を後にしました。
そして帰宅しようと歩いていると後ろから急に声をかけられました。
驚いて立ち止まると、そこには先ほどのスタッフの方が!
「ポストカードありました!」
物凄く暑い中を、息を切らせて走って追いかけて下さった事にも驚きましたが、
私がお店を後にしてからも品物を探して下さった事に本当に感激してしまいました。
そしてまたお店に戻り、友人の分と自分の分の2セット無事購入できました。
(丁度在庫が2セットしかなかったのも奇跡的!)
相田氏の新潟の街に向ける視線の新鮮さと、雑貨店のスタッフの方の
お客様に対する誠実さに、暑さを忘れて清々しい気持ちになりました。
今回は街歩きをする時間が無かったのですが、このほんの数十分の
やり取りでまたこの街の持つ魅力を感じさせてもらいました。
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