2012年6月9日土曜日

ジェーン・エア


【あらすじ】
孤児として叔母に育てられながらも疎まれ不遇な幼少時代を過ごし、追われるように寄宿学校に入れられるが、
そこでも不当な扱いをうける少女ジェーン・エア。
しかし生来の勤勉さと強さから教師になり、やがてソーンフィールド館の家庭教師として雇われることに。
身分を卑下したり追従しない態度と魂の高潔さに惹かれた館の主であるロチェスターに求婚され、
結婚を決意するのだが、そこには忌まわしい秘密が隠されていた。

1847年シャーロット・ブロンテによって書かれた長編小説。

ヴィクトリア朝絵画を思わせる装飾に乳白色の紗をかけたような画面は
どこまでも端整で美しい。

まさに絵画を一枚一枚観ているかのようなシーンが絵画にならないのは
ひとえに人物の実存感あってのこと。
特にジェーン・エアを演じているミア・ワシコウスカは画面がともすれば
遠い物語世界に入って行きそうになるのを、抜群の演技力と演出力
により切実な現実感を観客にもたらしている。

19世紀の厳格な規律と階級によって支配された世界において
タブーであったこと、それに反発し自主性を求めて主張する女性。
裏切りにあったとしても、それでも己の信じた道を行こうとする強き女性。

その強靭な精神力とは相反する繊細な感情の揺れ動きは
あえかな吐息、流す一筋の涙に如実に表されていてせつない。

19世紀の物語ではあるが、現代にも通底する意識を内包しているが故に
観客(特に女性)の心に強く訴えてくる。

ジェーンはお城の片隅で息を殺して涙を流していたが、
現代女性は気丈に振る舞いながらもオフィスの片隅、
またはキッチンのシンク前で息を殺して涙を流しているのかもしれない。

しかし、ただただ泣き崩れるか弱き乙女ではなく、唇を噛みしめながら
それでも愛を求めて立ち上がるジェーンに現代女性は強く惹かれる
のではないでしょうか。

19世紀ヴィクトリア朝絵画世界と現代の精神性を併せ持つ
スリリングでイノセントな傑作。おすすめです。

ジェーン・エア
http://janeeyre.gaga.ne.jp/

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